六甲山牧場で酪農分野のDX推進と高校生へのIT教育を連携した実証を実施しました

1.実証事業の概要について

(1)酪農分野のDX推進

牛は妊娠・出産を経て、搾乳が可能な乳牛となります。効率的な牧場運用のためには、まず正確な発情期を知ることが重要です。おおよその発情サイクル時間は知られていますが、正確な時間は毎回異なるため、現状、発情時期が近づくと飼育員が度々確認を行っており、検知に労力や時間が割かれています。一方、牛は、発情期に歩数が増加することが認められているため、アシックスのスポーツデータ収集システムTUNEGRIDとAIによる予測分析によって、発情期の検知・予測が可能かを検証しました。また、働き方改革の一環として、飼育員の歩数の可視化も行いました。

(2)実践的なIT教育

乳牛の行動分析にあたり、単に分析するのではなく、科学技術高校の生徒に分析方法をレクチャーし、高校生が主体となって分析を行いました。実践的なデータ分析を体験してもらい、かつ神戸市内の施設や企業との接点を作ることで、市内の仕事への興味喚起を行いました。データ分析を通して、乳牛の生体に興味を持ち、飼育員の就業時間や牛の利き足など、高校生の視点でデータを分析することができました。

(3)牧場DXのイベント展開

(1)の発展形として、乳牛の行動分析目的で設置済のインフラ設備（受信機）を活用し、牧場内でのトレイルラン・ウォークのタイム計測や、視覚障がい者の方や子供が誤って場外に出てしまうことを見守ることが可能かなどの検証を行いました。

2.検証結果について

本実証で乳牛の発情期における歩数増加を捉えることができました。また、日々の歩数変動が少なかったことから、異常値による病気の早期発見も期待ができます。データを用いたAI予測分析においては、予測値と実績値は高い一致を示すことが判明しました。データによって発情を予知するにはより長期間にわたる継続したデータの収集が必要であることが分かりました。牧場でのイベントでは、参加者からは起伏が激しく、コースとしての面白さがある一方で、景色が良く、また牛の横を走るといった楽しみがあり、面白かったとのお声や、牧場関係者からも牧場の活性化に繋がるとの評価をいただきました。見守り検証においては、受信機の設置場所を変えることで、見守れる範囲を可変させることができるため、屋内外を問わず活用の可能性が拡がります。

もともとスポーツデータ分析のためのデジタル技術を、1つの用途で活用するだけでなく、酪農分野のDX推進と牧場活性化、来場者見守りという複数の用途に同時に活用する仕組みについて検証を行うことができました。スマートシティにおけるデジタルの活用は、1つの課題に対して1つの解決法を提供するだけではなく、1つの技術で様々な課題の解決につなげていくこと、その可能性について実感する取組となりました。

3.データの公開について

本実証で得られた乳牛の歩数データについては、神戸市のオープンデータとして公開しております。
・神戸市のオープンデータサイト
https://data.city.kobe.lg.jp/（外部リンク）

4.参考

実施報告書について（神戸市HP）
https://www.city.kobe.lg.jp/documents/54047/r4assics.pdf

TUNEGRIDについて
https://www.tunegrid.asics.com/（外部リンク）

今回の実証に係るKDLのプレス
https://www.kdl.co.jp/news/2023/04/besmartkobe.html（外部リンク）