第14話 北向地蔵

最終更新日:2020年10月9日

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ずっと昔、生田川が加納町の交差点からフラワーロードを南に流れていました。ある年に、ずい分ひどい大雨がふりました。川の堤の上を、人々がいそがしく動きまわって、切れそうな堤に土のうをつんでいます。「そっちの土手は、だいじょうぶかー」


「おーい、上手の方が切れそうだー」何人かの人が、土のうをかついで上流の方にいそぎました。何日も続いた雨のために、どろ水の増した生田川は、ごうごうと流れています。堤の何か所かが今にも切れそうになっていましたが、日が暮れたころには、土のうももう残っていませんでした。

へとへとになった人々は堤のそばの高台にある番小屋に入って、すわりこんでしまいました。と、その時です。ズズーッ。ドーン、ゴリッゴリッ。暗くなった川の方で重い物を引きずるような音がしました。ズーッ、ドッボーン。ゴボゴボッ。川の中に何かしずんでいくようにも聞こえました。

しかし、つかれきった村人は外に出ていく力もなく、一人また一人と、みんなねむってしまいました。よく朝、もう空はきれいに晴れ上がっていました。起きだした人々は堤をみておどろきました。「あれーっ、あそこ。大木がひっかかって、今にも土手が切れそうや」

「大きな石で堤が直されとる」「石の上に北向きにお地蔵さまがおるぞ」「ゆうべの音は、この地蔵さまや。切れかけた堤を直してくれたんや。村の守り主や」こうして人々は生田川の西にお堂を建ててこの北向地蔵をおまつりしたということです。

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