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高発現が予後不良因子となるSETBP1遺伝子の造血における内因的役割を解明

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FBRI

記者資料提供(2023年7月27日)
企画調整局医療産業都市部調査課


公益財団法人神戸医療産業都市推進機構(理事長:本庶佑)は、先端医療研究センター血液・腫瘍研究部の田中淳特任研究員(研究当時、京都大学医生物学研究所より出向)・井上大地部長らの研究チームが、理化学研究所(古関明彦チームリーダー)、かずさDNA研究所(中山学主任研究員)、京都大学(小川誠司教授、河本宏教授、高折晃史教授)との共同研究により、急性骨髄性白血病(AML)において高い発現量が予後不良因子となるSETBP1遺伝子について、正常造血および腫瘍性造血における内因的な役割を探索し、その研究成果が2023年7月18日17時(日本時間)に国際学術誌『Leukemia』オンライン版に掲載されましたので、お知らせします。

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1.本研究のポイント

・SETBP1のタンパク質レベルでの過剰発現は白血病発症を促進し、急性骨髄性白血病(AML)を含む種々の血液悪性腫瘍において予後不良因子となることが報告されてきました(図A)。
・今回我々はSETBP1遺伝子のmRNAレベルでの高発現も予後不良とされる臨床的特徴や遺伝子変異と相関し、生存期間の短縮とリンクすることを新たに見出しました。
・ヒト・マウスともに血液細胞におけるSETBP1遺伝子のmRNA発現は造血幹細胞分画で最も高く、幹細胞の機能に不可欠なMECOM遺伝子と発現が相関していました。
・そこで、発現量により細胞形質が変化するSETBP1遺伝子の内因的な役割について、ヒトAML症例、ヒトAML細胞株、および新規に作成した造血細胞特異的ノックアウトマウスモデルを用いて詳細に解析を進めました。
・正常造血幹細胞・AML細胞両者において内因性レベルのSETBP1遺伝子の発現が果たす役割は非常に限定的で、ノックアウトしても造血にほとんど影響しないという予想外な結果を得ました(図B)。

このたびの研究成果は「発現量が重要な意味を持つがん遺伝子が必ずしも生理的に重要な役割を有する遺伝子とは限らない」という新しい概念を提唱するものとして、白血病を含む今後のがん生物学の発展に寄与することが期待されます。

※具体的な内容については、こちらの資料(PDF:1,476KB)をご覧ください。

2.発表者

田中 淳 

(研究当時)公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 先端医療研究センター血液・腫瘍研究部 特任研究員
      京都大学大学院博士課程(医生物学研究所 再生免疫学講座)

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神戸市立西神戸医療センター・神戸市立医療センター中央市民病院に計5年間勤務後、2019年より京都大学の大学院生として先端医療研究センター血液・腫瘍研究部へ出向し研究に従事。2023年4月より京都桂病院血液内科副医長として臨床に従事。

井上 大地
公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 先端医療研究センター血液・腫瘍研究部 部長

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神戸市立医療センター中央市民病院に5年間勤務後、東京大学医科学研究所、米国メモリアルスローンケタリングがんセンターで計9年間白血病研究に従事し、2019 年より血液・腫瘍研究部上席研究員(グループリーダー)、2021年より同部長に就任した。京都大学・神戸大学客員准教授兼任。

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