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神戸徳洲会病院への医療安全管理体制に関する行政指導の実施

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記者資料提供(2023年8月28日)
健康局保健所医務薬務課
 神戸市保健所あて「神戸徳洲会病院の心臓カテーテル検査・治療後の死亡事故隠蔽やハラスメントについて中止・捜査を要望する」旨の告発書が届いたことを受け、神戸市保健所では、医療法第25条第2項に基づく立入検査及び関係書類の調査を行いました。立入検査等の結果、神戸徳洲会病院の医療安全管理体制に複数の問題点があることを確認したことから、本日、当該病院の病院管理者に対し、是正のための文書による行政指導を行いました。
 さらに、心臓・下肢カテーテル術については、指導内容に対する是正対応を行った後、医療安全体制が確保されるまでは、再開すべきではないことを強く申し入れを行いました。

1.病院の概要

(1)病院名 医療法人徳洲会 神戸徳洲会病院
(2)所在地 神戸市垂水区上高丸1丁目3番10号
(3)病院管理者 新保 雅也(院長)

2.これまでの経緯

  2023年6月30日 神戸市保健所あて告発書が届く。
  2023年7月5日 医療法に基づく立入検査(第1回)
  2023年7月10日 医療法に基づく立入検査(第2回)
  2023年7月28日 医療法に基づく立入検査(第3回)

3.文書による行政指導の内容(概要)

【問題点】
(1)死因が明らかでない死亡例への対応の未実施
 院内の死亡例に対して、複数の職員から治療に起因したのではないかという指摘があったにも関わらず、病院管理者は医療安全対策委員会による検証を実施する等の責務を果たさなかった。その結果、医療安全体制が正常に機能せず、その後も疑義のある複数の死亡例が発生した。

 ①医療安全対策委員会による検証の未実施
 2023年1月より院内にてカテーテル術後に「死因が明らかでない死亡例」があった。原因がわからない死亡例について病院管理者は、循環器内科医師に意見を聴くのみで、医療安全対策委員会での十分な調査を行わず、また再発防止策の協議や情報共有をせず対応を終了した。さらに医療安全対策室長が、「医療安全対策委員会で調査すべき」と病院管理者に報告したが対応しなかった。

 ②徳洲会法人本部より院内で調査するよう指示されるも速やかな対応が未実施

 カテーテル術後に「死因が明らかでない死亡例」が発生した事態を受けて、2023年3月に医療安全対策室長が徳洲会法人本部へ2症例を報告し、本部より院内調査を行うよう指示された。しかし、病院管理者は、循環器内科医師のみに相談し、医療安全対策委員会にて検証を行わなかった。
 6、7月に徳洲会法人本部の循環器内科医師がその2症例について調査し、7月14日に法人本部主導の調査(医療安全調査委員会)を開催して協議した。その結果、一般社団法人 日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)へ報告及び再度調査を行う予定とした。速やかに実施されるべき医療安全対策委員会の調査が徳洲会法人本部主導にて開催されるまで、約半年間の時間を要した。

(2)循環器内科の医療安全体制の不備
 2023年1月より循環器内科常勤医師が配置されたが、十分な体制が構築されていないにも関わらず、予定及び緊急の心臓・下肢カテーテル術を開始した。医療安全体制が不十分であったために、患者に影響を与えた。

 ①HCU(High Care Unit高度治療室)にて求められる医療提供体制の不備

 2023年1月、急性心筋梗塞の患者に対して心臓カテーテル術をおこないHCU管理とした。その後、血圧が低下し、酸素飽和度が測定できない状態に陥っていたが医師に報告されなかった。医師もHCU入室後の患者の状態を確認せず、血管造影室を退室して約1時間後に患者の容態が急変した。循環器内科患者のHCU管理について医師と看護師等で情報共有体制が不十分であった。

 ②血管造影室(カテーテル室)における体制不備
 血行動態が不安定な患者に対して、心臓カテーテル術を施行中にIABP(Intra Aortic Balloon Pumping:大動脈内バルーンパンピング)の適応と判断した。しかし3回バルーンの挿入を試みたがいずれも正常に作動せず理由を製品の問題とした。当時、循環器内科医師は1人で施行しており、治療方針等を相談できる医師はいなかった。また、家族へ状況を説明している間、血管造影室に医師不在の状況が生じた。

 ③診療録(カルテ)の記載不備及びインフォームド・コンセントの不足
 心臓・下肢カテーテル術を受けた患者の診療録(カルテ)には、治療経過、診療方針、主治医の判断等の記載が不十分であった。具体的には、家族に対して、病状、治療法、手技の詳細、代替治療法、合併症とその頻度、急変時の対応、死因などを詳細に説明せず、その内容を診療録(カルテ)に記載していなかった。
 また、心肺蘇生中止後に、原因究明のため、頭部から腹部領域のCTを撮影したが、家族に対して撮影目的についての説明が無かった。その後も、死因についての十分な説明もなく、遺族は理解されていなかった。
 循環器内科で緊急入院した患者について、入院後から急変までの6日間、診療録(カルテ)に治療経過等の記載がなかった。


【指導事項】
 病院管理者は、患者の安全を最優先に考えた組織的な医療安全管理体制を実現するために、令和5年度末を目途として、以下の是正を実施・完了し、管理監督責任を果たすこと。是正計画書については、令和5年9月11日(月)までに提出すること。

(1)死因が明らかでない死亡例への対応
 ①病院管理者は死因が明らかでない死亡例を把握した場合、法令に則り、速やかに院内調査するよう医療安全対策委員会へ指示すること。
 ②医療安全対策委員会は、報告するべき症例、院内で調査するべき症例などについて整理し、職員に文書で周知すること。
 ③医療安全対策委員会へ原因が分からない死亡例の報告があった際には、速やかに検証を行うこと。その調査については、患者の臨床経過に関する情報を、
  診療録(カルテ)、看護記録、経過表等から幅広く収集し、記録に残すこと。
 ④医療安全に係る委員会が定めるマニュアルについて、職員が使いやすく機能的なものとし、非常勤職員を含め全職員に周知すること。
 ⑤医療の安全性向上のために、医療安全に係る委員会の再編成を行い各委員会の役割について明確にすること。

(2)循環器内科の医療安全体制
 ①HCU及び一般病棟での心臓・下肢カテーテル術後の管理体制について、医師と看護師等で情報共有体制等の改善策を講じること。
 ②侵襲的処置を行う際は、不測の事態に対応できるように熟知した人員を十分に確保し、トラブルが生じた場合には、
  助言を受けられ術者を交代できる等の体制を構築すること。
 ③医師のみならず関係する職員は、カテーテル術に関する知識及び使用する医療機器等に精通し、チーム医療の観点から互いに連携して、
  トラブルに対応できるようにしておくこと。
 ④死亡症例、穿孔(せんこう)などの合併症並びにインシデントが生じた症例等は、侵襲的処置の適応や術後経過について複数の循環器内科医師や
  他科の医師により妥当性を評価し、記録を残すこと。
 ⑤診療録(カルテ)は必要事項を全て正確に記載し、かつ最新の内容に保つこと。
 ➅「診療情報の提供等に関する指針」に則り、患者と家族に対して十分な説明を行い、理解と同意を得たうえで検査や治療を行うこと。
  また、説明した内容について記録を残すこと。


【用語説明】
・HCU(High Care Unit  高度治療室):
    ICU(集中治療室)よりもやや重篤度が低い患者を受け入れる治療施設。ICUと一般病棟の中間に位置するとされている。
・酸素飽和度:
    心臓から全身に運ばれる血液の中を流れている赤血球に含まれるヘモグロビンの何%に酸素が結合しているか皮膚を通して調べた値。
    通常96~99%が正常値。
・IABP(Intra Aortic Balloon Pumping:大動脈内バルーンパンピング):
    大動脈内でバルーン(風船)の拡張と弛緩を繰り返すことで、心臓の働きをサポートする循環補助装置。重症冠動脈疾患や低心機能の患者に使用される。
・インフォームド・コンセント:
    医療行為を受ける前に、医師から医療行為について、わかりやすく十分な説明を受け、それに対して患者は疑問があれば解消し、
    内容について十分納得した上で、その医療行為に同意すること。 
・侵襲的処置:
    患者に対する危険性の水準が一定程度以上の医療行為を行うものとして、外科的な治療や手術などのこと。
・穿孔(せんこう):
    臓器の壁に穴が開くこと、あるいは開いた状態。


【根拠法令等】
・医療法第1条の4第1項(良質かつ適切な医療の提供)
・医療法第1条の4第2項(適切な説明)
・医療法第6条の4(書面の作成並びに交付及び適切な説明)
・医療法第6条の10、同法施行規則第1条の10の2(医療安全の確保)
・医療法第6条の11(医療事故が発生した場合の調査)
・医療法第6条の12(管理者の医療安全確保の責務)
・医療法第15条第1項(管理者の監督義務)
・医師法第24条第1項(医師の業務、診療録の記載)
・診療情報の提供等に関する指針
 (2003年9月12日医政発第0912001号 改正 2023年1月25日医政発0125第7号 各都道府県知事あて厚生労働省医政局長通知)