秋の風物詩「霧」

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最近朝晩を中心に冷え込む日が多くなり、秋の深まりを感じる季節となりました。空気が冷え込んだ早朝には、山間部などで一面が霧に包まれ幻想的な情景になるときがあります。
今回は、外から見ると幻想的で美しいですが、中に入ると見通しが悪く、交通機関に影響を及ぼす「霧」を解説します。(この記事は、2023年11月29日に掲載しています。)

様々な霧と発生する場所

霧とは、気象庁の予報用語では「微小な浮遊水滴により視程(水平方向での見通せる距離)が1km未満の状態」と解説されており、視程が1km以上の場合の「もや」とは区別されています。 

空気には水蒸気という形で水が含まれていますが、気温によって空気中に含まれる水蒸気の量は決まっています。暖かい空気はたくさんの水蒸気を含むことができますが、冷たい空気は少ししか含むことができません。このため、何らかの原因で気温が下がると、空気中に含みきれなくなった水蒸気が水の粒となって目に見えてきます。この現象が地表面(地面や水面)で発生すると霧となります。

霧は、俳句などでは秋の季語となっていますが、条件さえそろえば一年中見ることができる現象です。

霧は、発生する場所や時間、空気の状態などにより次のとおりいくつかに分類されますが、実際には複数の要因が重なって発生することが多い現象です。

放射霧(ほうしゃぎり):晴れて風の弱い日の夜から朝にかけて、地表面付近の湿った空気が夜間に放射冷却(地表面の熱が放射によって奪われ、気温が下がること)で冷やされ、空気中の水蒸気が凝結することで発生する霧で、地形の影響で冷気が溜まりやすい盆地などで多く見られます。一般に、放射霧は地表から上空へと拡がっていき、日の出の時刻頃に最も厚くなりますが、太陽が出て気温が上がると消えてしまいます。

移流霧(いりゅうぎり):暖たく湿った空気が冷たい地表面の上を水平に移動するときに、冷たい地表面によって冷されて発生する霧です。暖かい空気が入って来やすい初夏の海に多い霧で、「海霧」ともよばれ、広範囲に拡がることがあります。瀬戸内海では、春先から梅雨時期にかけて、気温の上昇よりも海面水温の上昇が遅いため、相対的に海面水温が低くなることから、暖かく湿った空気の流入により移流霧が発生しやすい状況があります。

滑昇霧(かっしょうぎり):湿った空気が山の斜面に沿って上昇し、冷やされて発生する霧で、山の下から見ると、雲になります。山の斜面や海からの温かい湿った空気が入りやすい高地で見られることが多く、スケールの小さな局所的に発生する霧です。

蒸発霧(じょうはつぎり):水面から蒸発している水蒸気が、冷たい空気によって冷されて発生する霧で、空気の冷たい冬の川や湖で発生することが多く、水面上ごく薄い層が非常に濃く、高さは全般に低いのが特徴です。

前線霧(ぜんせんぎり):温暖前線から降る暖かい雨が、前線の下にある寒気内でいったん蒸発して水蒸気となり、それが再び冷やされて発生する霧で、一年中いつでも発生しますが、梅雨時や秋の長雨の時に濃い霧が発生することが多いです。

霧の発生イメージ図(移流霧、蒸発霧)
(成田航空地方気象台ホームページを加工して作成)霧

霧が発生すると見通しが悪くなることから、陸上や海上、航空の交通機関に大きな影響を及ぼします。特に車の運転中に霧がでてきた場合は、速度を落とし、車間距離を十分にとるか、危険を感じたときは、無理に運転を続けずに、安全な場所に移動して停車し、霧が晴れるまで待機する判断も必要になってきます。

濃霧により交通障害が発生するおそれがある場合は、気象台から濃霧注意報(兵庫県では視程が陸上で100m以下、海上で500m以下の場合)や海上濃霧警報(瀬戸内海では視程0.5海里(約1km)以下)が発表されます。

霧の発生は一年中ありますが、特に明け方が冷え込むことが多くなるこの時期は、このような情報にも注意してください。

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