寒波と寒気

ここから本文です。

12月から2月にかけ寒気が南下して、大雪や冷え込みに関するニュースを目にすることが多くなります。

今回は、冬の天気予報などによく出てくる「寒波と寒気」について解説いたします。(この記事は、2022年12月21日に掲載しています。)

寒波・寒気とは

クリスマスから年末にかけて、発達した低気圧の影響で天気が荒れ模様になることがあります。これは、日本列島の上空に強い寒気が南下することによるもので、低気圧が過ぎた後の寒波をクリスマス寒波や年末寒波と呼ばれています。

このように、冬になると天気予報やニュースに頻繁に出てくるのが「寒波(かんぱ)」や「寒気(かんき)」という言葉ですが、気象庁の「気温に関する用語」では、次のように解説されています。
 

寒気と寒波

このように、両者の違いは、どの程度長く気温の低下が続くかということになり、寒気は一時的で小規模なもの、寒波は寒気より規模が大きく長く続くものと、規模と期間の違いにあります。更に規模の大きい寒波は「大寒波」と表現されることもあります。

北極や高緯度地方で冷却された空気が中緯度に流れ出すことを寒気の南下と言いますが、寒気の南下には、北極域の気圧と中緯度域の気圧との関係が大きく影響しています。これを「北極振動」と言い、北極付近の気圧が平年よりも高い時には中緯度の気圧が平年よりも低くなり、北極付近に蓄積された寒気が中緯度に流れ込みやすく、日本を含む中緯度帯では低温傾向になります。これとは逆に、北極付近の気圧が平年よりも低い時には中緯度の気圧は平年よりも高くなり、北極付近からの寒気が中緯度に流れ込みにくく、日本を含む中緯度帯では高温傾向になります。

また、大規模な寒波は、上空の偏西風の波動現象とも深く関わっています。

一般的には、高緯度と低緯度の大気の温度差が大きくなると上空の偏西風が強まります。ある限度を越えると、寒気を南方へ暖気を北方に運ぶことによって、南北の温度差を小さくしようと偏西風は南北に大きく蛇行します。冬期に極東アジア・太平洋地域で偏西風の蛇行が大きくなると、シベリア高気圧とアリューシャン低気圧が発達し、冬型の西に高気圧、東に低気圧の気圧配置が強まり、日本は強い寒波に見舞われことになります。

寒波による影響は、大雪や低温、強風によるものなどがあります。寒気が大きく南下すると低温の範囲も南に広がり、それに伴って雪の範囲や大雪の範囲も南に拡大し、普段雪が降らない地域でも、積雪や凍結により事故の危険性や交通機関の乱れ、水道管凍結などにより日常生活に支障をきたす可能性が出てきます。

ラニーニャ現象発生時の寒波

北極振動とは別に、日本の天候を左右する要因の一つとして、ラニーニャ現象が知られています。(ラニーニャ現象については「第14回 エルニーニョ現象とラニーニャ現象」を参照)

ラニーニャ現象が発生すると、太平洋赤道域の西部では海面水温が平常時より高くなり、フィリピン東方海上からインドネシア近海の海上では対流活動が平常時より活発になります。この影響により、上空の偏西風はユーラシア大陸東部で北に、日本付近で南に蛇行するため、日本列島に寒気が流れ込みやすくなります。

2022年11月22日に大阪管区気象台が発表した近畿地方の3か月予報では、12月から2月の向こう3か月の気温は、寒気の影響を受けやすいため平年並みか低く、降雪量は冬型の気圧配置が強いため、日本海側では平年並みか多くなる見込みとなっています。

また、12月9日に気象庁から発表された「エルニーニョ監視速報」によると、昨年秋からラニーニャ現象が続いている。今後、ラニーニャ現象は終息に向かい、冬の終わりには平常の状態となる可能性が高い(80 %)と予測しています。

このようなことから、今後しばらくはラニーニャ現象の影響を受ける可能性があり、寒気の南下に注意する必要があります。

2022年11月22日発表の3か月予報の解説資料
(気象庁ホームページより)

お問い合わせ先

危機管理室総務担当