最終更新日:2021年11月24日
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神戸市内の下水処理場で流入下水を採水します。建設局下水道部の協力を得て実施しています。
採水後は、-20℃で保存し、健康科学研究所まで冷凍で輸送します。
下水を介して新型コロナウイルスが感染することはないと報告されています1, 2)。
〈下水処理場での採水の様子〉
〈採水された下水:解凍後〉
1)World Health Organization (WHO). 2020. Status of environmental surveillance for SARS-CoV-2 virus. https://www.who.int/news-room/commentaries/detail/status-of-environmental-surveillance-for-sars-cov-2-virus
2)Centers for Disease Control and Prevention (CDC). 2021. National Wastewater Surveillance System (NWSS). https://www.cdc.gov/healthywater/surveillance/wastewater-surveillance/wastewater-surveillance.html
下水サンプル中のウイルスRNAは非常に低濃度のため、濃縮作業を行います。
下水を遠心分離して、沈殿と上清に分けます。
新型コロナウイルスRNAは沈殿に多く存在することが論文で報告3)されているため、この沈殿を回収して、専用のキットを用いてRNAを抽出します。
〈下水を遠心管に分注して遠心する〉
〈遠心後の沈殿〉
3)Kitamura K et al. Sci Total Environ. 2021; 763: 144587.
RNAが抽出できたら、検査と同様の手順でリアルタイムPCRを行い、新型コロナウイルスが下水にどれだけ存在しているかを計算します。
新型コロナウイルスは呼吸器感染ウイルスであるものの、ヒトの糞便からも排出される特徴があります。そのため、流入下水における新型コロナウイルスRNA(遺伝子)の定量が流域内の患者数の予測に役立つ可能性があります(下図)。
定期的な流入下水のモニタリングによって、感染兆候を早く見出せる可能性について現在研究を進めています。
(関連リンク)
下水道における新型コロナウイルス感染症関連情報