ホーム > 市政情報 > 市長の部屋へようこそ > 令和8年度新規採用職員辞令交付式 歓迎のことば
最終更新日:2026年5月15日
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皆さんこんにちは。市長の久元喜造です。
今日神戸市役所に入庁された皆さん、おめでとうございます。共に汗を流し苦楽を共にし、市民のみなさんのために仕事をしていきましょう。
神戸は1868年の開港以来近代都市として、そして我が国を代表する都市として発展をしてきました。先進的な取組を行い、パイオニア的な政策も展開をしてきました。当時私たちの街はさまざまな試練、さまざまな困難を乗り越えてきた街でもあります。100年余り前、世界中を当時スペイン風邪と呼ばれた流行性感染症が襲ったとき、すでに国際港湾都市であった神戸の被害は非常に大きなものがありました。
1938年の阪神大水害、これは谷崎潤一郎の小説『細雪』でも詳しく触れられていますが、神戸市の大半の地域で多くの家屋が流されました。そして戦争の時代に入り、戦争末期、神戸市はB-29の空襲を受け、当時の神戸の市街地の約6割から7割が焼け野原となったとされています。戦前100万人を数えた神戸の人口は約38万人まで落ち込みました。戦後、焼け野原からの、そして闇市からの復興が始まりました。「山、海へ行く」という先進的な政策を展開し、都市経営のモデルとされましたけれども、31年前の1995年1月17日に巨大な地震が神戸の街を襲いました。予期せぬ、本当にこれは甚大な試練でした。
神戸市内で4,571名の命が失われ、そしてそのような中にあって、被災者の救出、救護、避難所の開設と運営、そして街の復興に先頭に立ったのが神戸市の職員でした。自ら被災し、また家族や友人に被害者が出る中で、懸命の対応をした職員の皆さんも多かったと思います。想像を絶する状況が次々に起きました。避難所に水が流れない、生活用水がない、トイレにも水が流れない、そういう中で、当時の神戸市政は絶対にこんなことを繰り返さない、絶対にこんなことがあってはならないという強い決意のもとに街の復旧と復興をスタートさせました。
生活用水を確保するために震災の翌年から大容量送水管の整備が始まりました。20年の歳月をかけて、そして巨大な経費をかけて完成をいたしました。今、私たちは水道管に大きな被害があっても12日分の生活用水を市民のためにこの大容量送水管で備蓄をし、直ちに対応できる体制をつくっています。震災の時、東灘下水処理場はその稼働を停止し100日間使えなくなりました。下水が処理できず悪臭が周囲を襲いました。絶対にこんなことを繰り返してはならない、神戸市の下水処理場をネットワークさせることによって、これに対応する取組も15年の歳月がかかりましたが完成しています。
震災を経験した神戸市にとって、懸念される南海トラフ巨大地震、そしてこれに伴う津波対策は極めて重要です。100年に1回の津波対策、1,000年に1回の津波対策は2023年度に完了しました。そして水門また陸上部分にある陸閘と呼ばれている部分の開閉は遠隔操作で職員が自宅からタブレットで行う仕組みも導入をしました。先ほど阪神大水害の話をしましたが、この大水害の翌年、当時の内務省は六甲山の砂防事務所の組織を設置し、以来戦時中も含み山の中で砂防ダム堰堤の整備、植林などがずっと続けられていきました。阪神大水害から80年がたった2018年、西日本豪雨が神戸も襲い、阪神大水害とほぼ同じ時期、ほぼ同じ期間、ほぼ同じ雨量がありましたが、軽傷者1人が出ただけで人的被害はほとんどありませんでした。
このような災害への対応は地下深く、あるいは市街地から離れた海岸で、あるいは山の中で行われているために、ほとんどの人は気づかないかもしれません。広報は行っていますけれども、多くの市民の皆さんは、ひょっとしたら知らないかもしれません。それはそれで良いのかもしれないと時々感じることがあります。私たちの仕事は市民から賞賛を受けるために、ましてやSNSで一つでも多くの「いいね」をつけてもらうために行っているわけではありません。市民の命、暮らし、安全を守るのが、私たちの絶対的な使命だからです。
そして私たちが対峙をしているのはバーチャルな世界ではなくて、リアルな世界です。リアルな現実の世界の中に生きる市民の皆さんです。そして市民の皆さんも、そして私たちも、そして職員の皆さんも、生身の存在です。肉体を持った、身体性を持った存在です。身体性を持つ人間は五感を統合し、世界を把握し、自ら判断をします。私たちはそのような生身の人間である市民と最も近いところにあって、そして自ら身体性を持った存在として、市民と向き合うことになります。市民の皆さん一人ひとりの目を見、そしてそこから発せられる言葉を自らの耳で聞き、そして市民の皆さんの表情から、どのようなことが読み取れるかを感じることができる職員として、仕事をしていただくことを期待します。
神戸で生まれ育った皆さんもいらっしゃると思いますが、神戸の街は大変広いです。さまざまな顔があります。また、神戸市役所への入庁を契機として、神戸に来られた皆さんには、心から歓迎を申し上げます。そしてぜひ皆さんには神戸の街を歩いていただきたいと思います。同じ通りであっても、雨が降っている時と、晴れている時とでは表情が違います。同じ時刻に歩いても、こちらから歩いた時と向こうから歩いた時と、街の表情が変わります。街は生き物です。ぜひ自分の目で、自分の耳で聞こえてくる音に耳を傾け、街の香りを味わっていただきたいと思います。
私たちはこの現実の神戸という街で、最も市民に近い、基礎自治体としての使命を果たしています。そして同時に今私たちは、バーチャルな世界の中にも生きています。AIはこれからどんどん進化していくことでしょう。AIを、あるいはドローンなどの最新のテクノロジーを私たちはどんどん取り入れています。そして同時にこのAIのリスクというものも感じているからこそ、神戸市は全国の自治体の中でただ一つ AIに関する条例を制定しています。AIが市民の権利に関わるからであるとともに、AIにはリスクを伴うことを自覚し、そのリスクを正確かつ的確に評価した上で、これを活用しようという取組だからです。
AIには未知の部分があります。AIはこれから進化していくことでしょう。ヒューマノイドが大きな効果を発揮することは間違いありません。同時にヒューマノイドがもっともっと進化し、あるいは別の形でAIが進化して、人間の脳以上の処理能力、認識能力、判断能力を持つようになったら、あるいはAIが身体性に基づかない五感を獲得するようになったら、それはAIであり続けるでしょうけれども、人間を超える存在となり、私たち人間を絶滅の危機に追いやるかもしれません。私たちはそのような不確定なこれからどうなるかわからない世界の中に生きています。
大事なことは、これからどうなるかわからないという不安に苛まれることではなく、今私たちが生きている、私たちの目の前にある現実の世界としっかりと向き合い、その中で生きていく力を身につけるということではないかと思います。AIに支配されるのではなく、AIを使いこなし、これをツールとして十分に活用して、市民や、そしてひいては国民全体の幸せのために、これを活用していこうという強い意志と、そして能力を持つということではないかと思います。そのような意味で、神戸市のように基礎自治体で働く私たちは、その最前線にいるとともに、そのような試みや営みの中で、最も自らの知見を発揮し得る立場にあるということではないかと思います。神戸市はこれからも最先端のテクノロジーをどんどん取り入れ、最先端の仕事をしていきたいと考えています。そのような中にあってぜひ皆さんの能力を大いに発揮していただきたいと思います。
神戸市政は皆さんが私たちの組織の中で、これまで学んだ知識や経験をさらに大きく開花させることができるような環境をしっかり用意をいたします。皆さんが成長できる環境を用意いたします。自ら勉強し、仲間とともに学び合い、そして資格を取得し、大学院や高度な研修機関での勉強の機会も用意をいたします。職員の皆さんが相互に活発に議論を交わし、また市民の皆さんとしっかりと語り合えるようなコミュニケーションツールを充実させ、コミュニケーション環境も発展をさせていきます。ぜひ私たちと一緒に力を合わせ、神戸市民の幸せのために、そして神戸の発展のために力を注いでいただくように、そして私たちの組織の中で大いに力を発揮することによって、皆さん自身が大いに成長していっていただけることを期待申し上げ、歓迎のご挨拶といたします。ありがとうございました。
2026年4月1日